手にたくさんの汗をかいて困った経験はありませんか? ひどくなると、手をつなげない、バッグの取手や本を持つと汗がにじんで恥ずかしい……など、深刻な悩みを持っている方もいるようです。
今回は、手汗の出る仕組みや、改善するための方法、治す方法をご紹介します。
手汗ってどんな症状?
「手汗」とは多汗症のひとつで、正しくは「手掌多汗症(しゅしょうたかんしょう)」と呼ばれます。男女に発症の差はなく、主に10〜30代に多く見られます。しかしまれに、幼少期でも発症することがあるため、注意深く見守る必要があります。
手の多汗症は、「ものを持つとすべり落ちてしまう」「手に持つものが濡れてしまう」など、したたり落ちるほど発汗する症状を指します。他人から見ると、ただの「汗っかき」と思われがちですが、本人にとっては大きな悩み。手汗が原因でうつ状態に陥ることも……。一般的に、緊張や過度のストレスを感じることで手汗がひどくなることが多いのに対して、多汗症の場合は、緊張やストレスに関係なく発汗するのが特徴です。
手汗の原因
手汗の原因は、残念ながらまだはっきりと解明はされていませんが、「自律神経の乱れ」という説が有力のようです。活動的な日中は、自律神経のひとつである「交感神経」が優位に立ち、脈拍や心拍数、血圧を上昇させることで興奮状態をキープしています。反対に、身体をゆっくり休める睡眠中は「副交感神経」が優位に立ち、身体のさまざまな機能の活動を抑えています。
交感神経が優位に立つと、汗を分泌する「エクリン腺」が活性化します。なんらかの原因で交感神経の優位性が乱れると、手汗が発症すると考えられています。
手汗を治す方法について
手汗を改善するには、個人でできるものから医師が行う治療まで多岐に渡ります。代表的な改善策をご紹介します。
1.食事療法
食生活を改善する方法は、即効性はないものの、毎日続けることで効果が期待できます。
チーズやバターなどの動物性脂肪を多く含んだ食材は、肥満の原因と言われています。肥満体型は汗をかきやすいことから、肥満体型にならない食生活を心がけることが大切です。また、唐辛子のような刺激の強い香辛料やカフェインが多量に入っている飲料は、発汗促進作用があるので控えましょう。
大豆、豆乳などのイソフラボンを含む食品を摂ることで、女性ホルモンの働きが活性化されます。女性ホルモンには、プロゲステロンという体温を高くして汗を出すホルモンと、エストロゲンという汗を抑制するホルモンの2種類があります。この2種類のホルモンバランスを整えることで、発汗を抑制する効果があります。また、神経系の働きを正常に保つためには、ビタミンB群を積極的に摂るのもおすすめです。
2.ツボ押し
精神的なものも影響すると言われている手汗は、手にある「合谷(ごうこく)」と呼ばれるツボを押すことで汗を抑制できます。合谷は、親指と人差し指の付け根付近にあります。手の親指と人差し指で、ゆっくりと心地よく感じる程度に両手を交互に指圧しましょう。
専門家に相談、手汗の治療方法
改善方法を試しても効果が見られない場合は、医師の診断による治療が効果的です。
ボトックス注射
ボトックス注射は、美容外科でも使用されるもので、主にシワ治療に有効だと言われています。ボトックス注射の製剤であるボツリヌス菌を、シワの気になる患部に注入し筋肉を麻痺させることで、シワができない状態にする治療法です。手汗治療の場合は、ボツリヌス菌を患部に注射することで、汗腺の機能を低下させることを目的としています。
手術
手汗治療は、「ETS手術」が有効です。皮膚に小さな穴を開けて内視鏡を挿入し、交感神経を切除します。手術による手汗治療は有効性がある反面、後遺症や副作用のリスクもあります。医師とよく相談した上で、治療をすすめることが必要です。
手汗がひどいばかりに、日常生活に支障が出るようでは、QOL(クオリティーオブライフ:生活の質)が低下します。改善策を考えるとともに、医師に相談をして、早めの解決を心がけましょう。
参考: