日本人の約2割もの人が悩んでいる「便秘」。そのうち、7割は女性との調査結果もあるほど女性にとって便秘はやっかいな存在です。慢性的な症状を抱えているにも関わらず、体質ととらえ、軽視している人も多いのではないでしょうか。 便秘は腹部のふくらみや肌荒れの原因になるだけでなく、重大な病気のサインということもあります。便秘にはいくつかのタイプがあり、それぞれの症状にあった対策が必要です。

便秘のタイプ

「いつごろから便秘に悩んでいますか?」という質問に、みなさんはどう答えますか? 慢性的な便秘を繰り返す人ほど症状に慣れてしまっている傾向にあります。そのため、いつごろか便秘になったのか、何がきっかけだったのかよくわからないという人が多いようです。まずは原因を知ることから改善の道を探してみましょう。

1.弛緩(しかん)性便秘

腸のはたらきが弱くなり、便を押し出せない症状です。日本人にもっとも多いタイプといえます。原因は腹部の筋力低下が考えられます。 お腹周りの筋力が落ちると、ミミズのように動く腸の動き、「蠕動(せんどう)運動」が緩慢になります。そのうえ、腹筋の力も弱くなるため便が押し出せず、便秘を引きおこします。お年寄りや女性、運動不足の人に多く、お腹が張るのが特徴です。

2.痙攣(けいれん)性便秘

腸が痙攣をおこして引きつったり、蠕動運動が激しくなったりする状態を繰り返す状態です。過敏性腸症候群とも呼ばれます。 痙攣しているときは腸が動かないため便秘に、痙攣が落ち着き蠕動運動が激しくなると下痢の症状が表れます。ストレスに関係しているといわれ、男性にも多い便秘のタイプです。

3.直腸(ちょくちょう)性便秘

大腸と肛門をつなぐ直腸付近に便が固まり、排便が難しくなる症状です。原因は慢性的に排便を我慢することにあると考えられています。 便が直腸に到達すると、脳に伝達が届いて便意を感じますが、このときに排便を我慢してしまうと、脳からの指令がうまく機能せず、便意がおこりにくくなります。

便秘のタイプ別解消方法

便秘の原因を取り除くためには、自分がどのタイプの便秘なのかを知ることが解決への近道です。そのうえで適切な対処法を見極めましょう。

1.弛緩性便秘の解消法

このタイプの便秘は、腸の動きを活発にすることがポイントになります。食物繊維を多く含む食事を摂り、こまめな水分補給を心がけましょう。食物繊維は水分を含むことで便のかさを増やし、腸の蠕動運動を活性化、排便に促します。 また、腹部を中心に筋力をつけることも大切です。お腹周りの筋力アップには腹筋運動がおすすめ。無理のない回数からはじめ、継続することを意識しましょう。正しい姿勢をするだけでも腹筋が鍛えられるので、腹筋運動が難しい場合は背筋を伸ばすことも有効です。

2.痙攣性便秘の解消法

ストレスからくる便秘には、リラックスできる環境づくりや適度な運動を取り入れてみましょう。このタイプはときに、急な下痢症状に襲われるため、症状そのものがストレスとなり便秘を悪化させている可能性もあります。なかなか改善しない場合は専門医に相談することをおすすめします。

3.直腸性便秘の解消法

規則正しい生活を心がけ、決まった時間にトイレに行く習慣を身につけることからはじめましょう。特に、朝食後は消化器官が連動して動きやすくなるので、排便によいタイミングです。 時間がないと落ち着いて用をたすことができないので、少し早めに起きてトイレタイムをつくるようにしましょう。最初は便意がなくても、繰り返すことで決まった時間に便意が感じられるようになることでしょう。

自己流の便秘解消は危険

便秘の悩みに市販の便秘薬(下剤)や漢方薬を服用している人も多いことでしょう。その多くは、薬の力で無理やり蠕動運動をおこすので、繰り返し使用すると腸が自ら動くことをやめてしまうともいわれています。 これは「下剤依存症」と呼ばれる状態で、腸の動きを正常に戻すためには長い時間がかかります。漢方成分を含む薬やお茶も決して安全とはいえません。 また、市販の下剤は弛緩性便秘向けのものが多いので、痙攣性便秘や直腸性便秘の人が使うと、症状が悪化する恐れがあります。自己判断で使用するのではなく、医師や薬剤師に相談したうえで、自分にあった市販薬を選びましょう。また、慢性的な服用にも注意を。

便秘改善を先送りにしないで!

腸は身体の免疫機能が集中する、大切な臓器のひとつです。それだけに便秘の対策は慎重に取り組む必要があります。便秘が長引くと最悪の場合、大腸がんといった重い病気を見逃すことにもなりかねません。 改善を先延ばしにすればするほど症状は悪化してしまいます。さっそく今日から便秘改善に取り組んでみてくださいね。 参考: 参考書籍
  • 「便秘を治す45の方法」健康ライブラリー|講談社|マリーゴールドクリニック院長山口時子監修